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【人気FP が教える】20代から知っておきたい「医療保険」「がん保険」の基本
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日々の仕事やプライベートで忙しい人ほど、つい後回しにしてしまう「保険」。しかし、医療保険やがん保険は、「十分な貯蓄ができていない『20代』のうちに加入を検討するのが重要」と、ファイナンシャル・プランナーの新井智美さんは話します。今回は、医療保険・がん保険の基本から選び方のポイントまで、新井智美さんに詳しく話をうかがいました。
- コラムサマリ
▽目次
・医療保険・がん保険とは? 貯蓄が少ない人こそ検討したい理由
・20代から加入を検討するメリットとは?
・三大疾病特約、女性疾病特約は要チェック!
・保険に加入できることは、実は幸せなこと
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- ――医療保険・がん保険について、初めにそれぞれの特徴やメリットを教えてください。
- ――医療保険で保険金が請求できる、意外なケースがあれば教えてください。
- ――がん保険に付帯されている「がん診断一時金」の具体的な使い道があれば教えてください。
- ――それぞれの特徴から、どのような方が検討したい保険といえるでしょうか。
- ――新井さん自身は、医療保険・がん保険を加入されていたり、過去に検討したりしたことはありますか。
- ――医療保険やがん保険に加入するなら、何歳までに入るのがよいのでしょうか。
- ――20代から医療保険・がん保険に加入すると、どのようなメリットがありますか。
- ――仕事やプライベートが忙しく、つい後回しにしている人も多いと思います。後回しにしていると、どのようなデメリットがありますか。
- ――選ぶ際に気をつけたいポイントはありますか。
- ――医療保険やがん保険への加入を考える際、チェックしておきたい「特約」を教えてください。
- ――加入後に、気をつけなければならないことはありますか。
- ――最後に、医療保険やがん保険の加入を迷っている読者の方にメッセージをお願いします。
※ご契約にあたっては、必ず「重要事項説明書」をよくお読みください。ご不明な点等がある場合には、お問い合せください。
※取り扱い保険会社及び保険商品について、ご不明な点等がある場合には、お問い合せください。
※文中に記載の保険商品、サービス、特約の名称及び内容は保険会社によって異なる場合がございます。
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■医療保険・がん保険とは? 貯蓄が少ない人こそ検討したい理由
――医療保険・がん保険について、初めにそれぞれの特徴やメリットを教えてください。
・医療保険(民間医療保険)
病気やけがの保障を目的とし、公的保険では賄えない「差額ベッド代」や「食事代」などをカバーできる保険のことです。保障の範囲が広いことや、公的保険や高額療養費だけではカバーできない部分を保障してもらえることがメリットとして挙げられるでしょう。
民間の医療保険には大きく分けて「終身型」「定期型」、さらには「掛け捨て型」「貯蓄型」のものがあります。また、持病を持つ人に向けた「引受基準緩和型医療保険」もあります。
従来の医療保険は「入院給付」および「手術給付」だけを目的としており、入院給付については4日免責(入院しても5日目からしか給付金が支払われない)ものが主流でしたが、最近では入院したその日から給付金の対象となるものや、日帰り入院でも5日分もしくは10日分の入院給付金を支払う商品などが見られるようになってきています。
・がん保険
がん保険の特徴は、がんと診断された際、診断給付金としてまとまった額が支払われる点です。また、がんと診断された以降の保険料の免除や、抗がん剤治療や先進医療に対する保障が付いているものもあります。また、どのがん保険も、契約してから90日間の免責期間が設けられている点も特徴です。
がん保険のメリットは、まず、がんと診断された際にまとまった額の給付金を受けられる点が挙げられます。そのほか、医療保険では60日間や120日間など入院給付金に関する日数制限がありますが、がん保険はこうした日数制限がない点もメリットと言えるでしょう。
厚生労働省「令和2年 患者調査」によれば、がん患者の入院日数は短期化しています。1996年はがんの入院日数は平均46.0日間であったところ、2020年には平均19.6日間という結果でした。ただ、治療によっては長期入院が必要になったり、入退院を繰り返したりするケースもあります。その際、がん保険に加入していれば入院日数や入院回数を気にすることなく、安心してがん治療に専念することができるでしょう。
――医療保険で保険金が請求できる、意外なケースがあれば教えてください。
コロナに罹患した際に請求できるケースのほか、出産の際に陣痛促進剤を利用した場合に給付金が支払われることもあります。また、乳がんになった際の乳房再建費用についても一定額が給付される商品があることも知っておくとよいでしょう。日本対がん協会によれば、乳がんは日本人女性の9人に1人が罹患するとされています。罹患してから保険に加入することは難しいため、早めに医療保険やがん保険を検討することが大切です。
参考:日本がん協会「ピンクリボンフェスティバル」
――がん保険に付帯されている「がん診断一時金」の具体的な使い道があれば教えてください。
一度、がんに罹患すると、会社に復帰したとしても以前のように働くことが体力的に難しくなる場合もあります。今後の収入減を見越して、がん診断一時金を生活費へ充当することも考えておくとよいと思います。
また、がんを患うと、メンタル面のケアにお金がかかることがあります。特に、精神的な病は長引くことも少なくないため、心療内科にかかった際の通院費用や薬代に充てるのも選択肢のひとつになるでしょう。
――それぞれの特徴から、どのような方が検討したい保険といえるでしょうか。
特に、自営業者やフリーランスの方、そして貯蓄が少ない人は検討する必要性が高いと言えます。
・自営業者やフリーランス
自営業者やフリーランスは公的な保障としては「高額療養費制度」しかないため、病気やけが、もしくはがんに罹患した際に仕事を休んだ際の「傷病手当金」のような保障がないことから、必ず加入しておくべき保険といえます。同じ理由で専業主婦(夫)も加入しておくことをおすすめします。また、今は該当しなくても、今後独立や起業を考えている人は、早めに加入を検討しておいた方がよいでしょう。
・貯蓄が少ない人
公的な保障は申請してから支払われるまで2~3ヵ月の期間を要します。そのため、申請中の生活費などといった緊急資金を貯蓄で用意できていない人は、医療保険やがん保険に加入しておくと安心です。
――新井さん自身は、医療保険・がん保険を加入されていたり、過去に検討したりしたことはありますか。
社会人になって最初の1年目が過ぎる23歳頃、終身保険(死亡保障)に加入し、その特約として医療保険に加入しました。その頃は保険の利回りも良く(6%~7%)、保険商品で十分に資産運用ができる時代だったので、養老保険などにも加入していました。
■20代から加入を検討するメリットとは?
――医療保険やがん保険に加入するなら、何歳までに入るのがよいのでしょうか。
医療保険は、基本的に病気に罹患している場合は加入できません。一方で病気にかかる確率は、当然ながら年齢を重ねるにつれ高くなるので、健康な状態のうちに加入しておくことをおすすめします。特に、20代という若いうちから加入すると、保険料を安くできるというメリットもあります。
具体的な、加入時期の目安としては、できれば社会人になって3年くらいの間(25歳くらいまで)がよいと思います。社会人になって年数も経つと仕事が忙しくなり、保険の加入を考える余裕もなくなってしまうからです。
また、結婚を機に保険を検討する人もいますが、結婚するタイミングでは、いろいろと他に考えなければならないことも多く、結局「落ち着いてから考えよう……」と後回しになってしまいがちです。できれば、結婚の準備を始めるまでに加入しておくのが理想的です。
保険には、加入から一定期間は保障の対象外となる「免責期間」があることにも注意しましょう。特に女性なら、出産や女性特有の病気に備えて、早めに検討しておきたいところ。病気は思わぬタイミングでかかることもあるため、免責期間を見越して、早めの加入を検討できるとよいですね。
――20代から医療保険・がん保険に加入すると、どのようなメリットがありますか。
繰り返しにはなりますが、健康なうちに保険を検討することで、保険料が安い時期に加入することができます。更新型の保険でない限り、契約時の保険料は変わることはありません。加入年齢が上がるにつれ保険料が高くなるため、早い段階で加入しておくメリットは大きいといえます。
――仕事やプライベートが忙しく、つい後回しにしている人も多いと思います。後回しにしていると、どのようなデメリットがありますか。
検討を後回しにすると、「いつまで経っても検討しない」、「延々と後回しにしてしまう」といった習慣がついてしまいます。その間も病気やがんに罹患するリスクは確実に高まりますし、さらに加入年齢に伴って保険料が高くなるというデメリットもあります。
保険に限りませんが、健康なうちに、後回しにせずに将来への備えを考えておきましょう。
■三大疾病特約、女性疾病特約は要チェック!
――選ぶ際に気をつけたいポイントはありますか。
必ず2つ~3つの保険商品の保障内容および保険料を比較して検討することが大切です。がん保険であれば、「上皮内がん」と呼ばれる初期段階のがんの保障がどうなっているかは、重要なポイントです。近年はがん検査の精度が高まってきており、初期段階で見つかるケースが多くなっています。上皮内がんについても、いわゆる「がん(悪性新生物)」と同等の保障を受けられるタイプを選択すると安心でしょう。
また加入の際、担当者がどこまでフォローしてくれるかも気をつけておきたいポイントです。
――医療保険やがん保険への加入を考える際、チェックしておきたい「特約」を教えてください。
もちろん、最終的には保険料とのバランスで考えるべきですが、医療保険であれば、例えば三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)に備える特約は、ぜひつけておくべきだと思っています。女性であれば、「女性疾病特約」も忘れずにつけておいてほしいです。
がん保険なら通院特約や抗がん剤、放射線療法、先進医療特約も考えておくべきでしょう。特に、近年は通院治療が主流になりつつあるため、通院特約は必ずチェックしておきたいポイントです。
――加入後に、気をつけなければならないことはありますか。
保険は、加入後も定期的に見直すことが重要です。特に医療保険は、年々医療技術が進歩しているため、保障内容が変わるペースが早くなっています。保障内容も今の時代の医療に合っているかどうか定期的にチェックするとよいでしょう。
■保険に加入できることは、実は幸せなこと
――最後に、医療保険やがん保険の加入を迷っている読者の方にメッセージをお願いします。
私は社会人になってすぐに死亡保障および医療保険に加入しましたが、その後、保険の見直しを一切せず、医療保険も入院給付金は5日目からしか支払われない内容のままでした。がん保険への加入を勧められた際も「自分には必要ない」と思い、断っていましたが、がん保険に加入しないまま、30代で胃がんを患いました。「まさか自分が……」とショックを受けたことを覚えています。
進行性の早いがんだったため、告知を受けてから1週間後には手術を受けることに。胃を切除したため、それまでとは全く異なる食生活を余儀なくされました。消化の悪いものや生ものはできるだけ避け、少しずつゆっくりよく噛んで飲み込まなければなりません。食べたものが胃で消化されず直接腸に届いてしまうため、栄養を吸収できないことや、食後はしばらく横になっていなければならないといった後遺症に今でも悩まされています。
がんに罹患して5年を過ぎた頃に医療保険を見直そうと思いましたが、「がんを経験している」という事実があるため、緩和型の医療保険にしか加入できませんでした。ましてや、がん保険は一度がんに罹患したら加入できないため、今でも加入することは叶いません。なぜ、若いころ加入を勧められた時にがん保険に加入しなかったのか、と悔やんでもどうにもならないのです。一度、がんに罹患した人は、他のがんを患うリスクも大きくなるため、私にとってがん保険は保険料が多少高額であっても加入できるなら加入したい商品です。
そんな経験をしてきた私にとって、「保険に加入できることは、幸せなこと」だと思います。健康なうちに加入することで、その後の人生の最大のお守りになります。そのことを意識して医療保険、そしてがん保険の加入を真剣に考えてもらいたい。それが私の伝えたいことであり、願いです。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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新井智美
- 執筆者プロフィール
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ファイナンシャルプランナー。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、これまでに2,000件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
【保有資格】CFP®資格、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)(日本FP協会)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会&金融検定協会、証券外務員
- 募集文書管理番号
- 07E1-29A1-B22090-202209